天空よりみつめる無数の神
出典: ウィキ
最初のパーキングに着くと、すでにそこは廃墟だった。ガス・ステーションは破壊されていた。ストアも同様の状態だったが、屋根はまだ残っていた。
ふと男は、中に入ってみようと思ったが、やめた。危険すぎる。中に何がいるか分からない。
その時、男はパーキングの奥にできた黒い水たまりがゆっくりと自分のほうに向かって動いてくるのを見た。やはりここも汚染されていたのだ。
男はあわてて車に戻り、猛烈な早さで車をスタートさせた。
日没が近づいていた。燃料は残り少ない。このあたりの夜は零下になる。昼間見たような奴等は活動を停止するかもしれないが、男の生命もまた危機に瀕していた。
真夜中近くについにエンジンは停止した。男は登山用のザックを肩にかつぎ、車を捨てた。熱いエンジンを慕って汚染生物たちがやってくるのを恐れたのだ。
男は歩きに歩いた。南へ南へと。
疲れた男は、立ち止まり、天を仰いだ。月のない夜に冴えているのは無数の星々であった。それらの数はあまりに多く、見ている間に男はめまいを感じた。星々は暗い天空に空けられた無数の覗き穴であった。その向こうには神の目があるに違いない
彼らは、人間たちをじっと観察していたのだ。我々が街の明かりでその穴を消し去ったと思いこんでいた時にも。光の速度をもってしても我々が辿りつけぬ彼方から、ただじっと。彼等は絶対的な勝利者であった。
男は天に空いた無数の穴から目を落とし、再び歩き始めた。凍てついた夜はまだ始まったばかりで、男が目指す「南」は遥か彼方であった。
(続--かなかった)
