神の手を持つ男

出典: ウィキ

若き日、市政の考古学研究家であった藤岡は己の手を憎んでいる。彼が遺跡発掘に参加すると、その時代にふさわしからぬ遺物が続々出土してしまうのだ。  東北と近畿地方に多量の旧石器を発掘したとき、一時、それらの遺物は歴史学者からも認められ、藤岡は遺跡発掘のプロ「神の手を持つ男」とまで呼ばれた。  しかし、いまや、それらの遺物は偽造品とされ、藤岡は歴史家から相手にされなくなっている。  歴史への興味を断ち切り、地元の小さな商社で営業職に就いた藤岡は、ある日、娘を公園に連れていった。  戯れに砂場をプラスティックのシャベルで掘ってみる。すると、ザクザクと旧石器が出てきた。 「これ、何?」 娘が尋いた。 「なんでもない」 藤岡は、石器を砂のなかに埋め戻し娘の手を引いて公園を後にした。

通常の空間では光速度は秒速約30万キロメートルである。しかし、変質している空間では、それ以上の速度で光が伝わる場合がある。 (通常の空間からみて)超光速となった粒子が、通常の空間に突入すると、速度は秒速約30万キロメートルまで落ちる。このとき、粒子が速さとして持っていたエネルギーは光として放出される。  仮に、真空中でチェレンコフ放射が検出されれば、その付近に、異常な性質を持った空間があると考えられる。  そして、その異常な空間はあった。藤岡の手の周辺に。