鎮圧

出典: ウィキ

 夜闇にまぎれて「神の手」がやってきた。  赤外線スコープで暗視すると、彼らの両手が白い炎をあげているのが見える。  高木の耳に入れたスピーカーに指令が入った。 「状況は“赤”だ」  射殺を含み、方法の如何を問わず排除せよ。  高木は、M-16A機関銃を構える。  心臓を狙い、3点バースト。  しかし、弾は大きく逸れ、遺跡の一部を削った。  結界の噂は本当だったと高木が認識した瞬間、敵の姿がスコープから消える。  近くに何かが落ちてくる音。  左目が、100メートルもジャンプしてきた目前の敵をとらえる。  敵は機関銃の銃身をしっかりと握った。銃身が曲がる。  スコープから目をはずし、目前の敵を見る。  敵が右手をかざした。闇のなかで掌が青い光を放っている。  高木の顔に近づく右手。そして、顔をおさえられた。  高木の右手は条件反射で右脛につけたアーミーナイフを抜こうとする。  しかし、間に合わない。  一瞬暗くなった視界。続いて、小さな青い炎が見える。目蓋を閉じるが炎は消えない。  頭のなかが真っ白になった。  白い世界に高木の意識は拡散していく。そして、意識は失われた。

 高木の意識が回復する。目蓋が開かない。顔が焼けるように熱い。触ろうとしたが、両手は動かなかった。  声をあげる。 「助けて、助けて」  ひとつの足音が近づいてくる。 「落ち着いて」  若い女の声。看護婦だろうか。 「どうなった」  ざらついた自分の声。 「あなたは捕虜になったのよ」  女の声。  目の上に、ぬれたタオルがあてられる。  目やにで固まっていた目蓋が開く。  高木は声の主を見た。  女子学生だった。大橋高校の制服を着ていた。これが敵。 「私を見てしまったからには、返せない」

 自衛隊から出向してきた高橋は狙撃のエキスパートだった。  鎮圧し損ねた。